空き家など不要な物件は、相続放棄をすることでその管理責任を免れ、不動産は国庫に引き継がれると認識されている方が多いかもしれません。
結論から言うと、相続放棄をしても「管理責任」は残るのが、現在の制度となっています。空き家の相続放棄と、その管理責任について確認してみましょう。
空き家の相続放棄について
相続放棄の基本ルールについて確認します。
・相続放棄は「するかしないか」の二択
相続放棄とは文字どおり遺産の相続を放棄することです。
相続は原則として、すべての財産を相続するかしないかの二択であり、自分が欲しい財産だけを相続して、都合の悪い不動産を相続放棄する、という「いいとこ取り」の相続放棄をすることができません。
不動産の相続を放棄するのであれば、他のプラスの資産も含めて全部放棄する必要が生じます。
・相続放棄は知ってから3か月以内
相続放棄は「自己のために相続があったことを知ってから3ヶ月」以内(民法915条1項)に家庭裁判所に申述をしなくてはなりません。
この期限を過ぎてしまうと、どれだけ多くの負債があったとしても、基本的に亡くなった方の遺産がすべて相続されることになります。
・相続人がすべて相続放棄して相続人不存在
亡くなった方の子ども・兄弟など、法定相続人(民法第886条~895条で規定)が全員相続放棄を行なったときにはじめて「相続人不存在」の状態となり、空き家は相続関係から離脱します。
そして放棄された空き家など、財産自身が「相続財産法人」として法人格を持つこととなります。
相続放棄後の不動産
空き家は、相続放棄をしてすぐに国庫に引き継がれるわけではなく、次のように清算処理が行なわれます。
・相続財産管理人の選任
関係するすべての人が相続放棄をし、相続人がいなくなった場合は、家庭裁判所によって選任された「相続財産管理人」(弁護士等が選任されるケースが多い)が遺産を管理する責任を引き継ぐこととなっています。
空き家の管理責任を免れるためには、相続放棄の手続きに加え、相続財産管理人選任の申し立てをおこない正式に選任されるまでが、必要なプロセスです。
・相続財産管理人選任の現状
理論上は上記の内容で管理責任を免れることとなりますが、実際にこのように手続きが進むことはほとんどありません。
なぜなら、相続財産管理人の選任には費用がかかりますが、そもそも相続財産がマイナスのため、その費用を捻出する余地がないからです。
相続財産管理人の選任を申し立てる際には、その報酬や経費に充てるための「予納金」が必要となり、少なくとも数十万〜、難易度によって100万円前後はかかるとされています。
この予納金は、余れば後で返還されますが、結局追加で持ち出しとなってしまう例もあります。
・宙に浮いた不動産
こうした現状から、相続財産管理人が選任されず結局「宙に浮いた不動産」はどうなってしまうのでしょう?
民法第940条第1項によると、
これにより、相続放棄者は相続財産について次の管理者が登場するまで管理責任が残ったままとなります。
先の事情から、次の管理者である「相続財産管理人」が選任に至るケースはほとんどないため、結局相続放棄をしても管理責任は残ったままとされているのが実態です。
したがって、老朽化した建物によっておこる危険を取り除くことなどの責任は、相続放棄後にも残ると考えていた方がよいでしょう。
まとめ
相続放棄をしたからといって、空き家について無関係になるのではなく、その管理責任は残るのが実態とされています。
管理責任がある限り、危険な空き家によって起こる損害などに対して責任を問われる可能性があります。
また管理が不十分な空き家が行政から「特定空き家」に指定され、行政代執行によって解体費用が持ち主に請求されるケースも増えてきており、空き家の所有者は、そのゆくえについてすぐにでも決断することが重要となっています。
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