0円物件は、物件価格は0円でも、登記費用や税金などがかかり、タダで取得できるとは限りません。
ここでは物件をあげる方ともらう方に分けて、個人間で0円物件を取得するにあたりかかる「お金」について、解説します。
0円物件をあげる方
0円物件をあげる方は、基本的にお金はかかりません。
ただし契約条件などによって、もらう方にかかるお金をあげる方が負担するケースもあります。
また会社など「法人」に贈与をおこなう場合は、税金が生じるケースがあります。
0円物件をもらう方
物件をもらう方にかかるお金には、おおきく分けて1 登記費用・2 税金の2つがあります。
分類 | 費目 | 金額 |
登記費用 | 印紙代 | 200円 |
登録免許税 | 固定資産税評価額 × 2% | |
司法書士代行費用 | - | |
税金 | 贈与税 | 課税価格 × 税率 − 控除額 |
不動産取得税 | 固定資産税評価額 × 2% | |
固定資産税 | 固定資産税評価額 × 2% | |
都市計画税(一部地域) | 固定資産税評価額 × 0.3% |
ひとつずつ解説していきます。
登記費用
贈与契約書の印紙代200円
物件をもらう際には、贈与契約書を締結します。贈与契約書には印紙を貼る必要があり、契約書1部につき200円の印紙代金がかかります。
登録免許税
次に不動産の所有権を移転するために、所有権移転登記(名義変更の登記)を行います。所有権移転登記は管轄する法務局で行い、申請する際には登録免許税がかかります。
税額 = 固定資産税評価額(課税標準額)× 2%
固定資産税評価額は市町村が決定するもので、0円物件であっても家屋が有る限り評価額はゼロにはなりませんので注意が必要です。
固定資産税評価額の調べ方は、次の記事で解説しています。
登録免許税は、贈与税のように後から支払うのではなく、必ず法務局へ申請する際に支払わなければいけません。
手続き代行費用
この所有権移転登記申請を自分で行うのではなく司法書士に依頼する場合には、別途手続き代行費用がかかります。
税金
課される税金には、もらったことに対してかかる贈与税と、不動産を取得したことにかかる不動産取得税があります。
また物件を保有している限り固定資産税が毎年課されます。
贈与税
贈与税は、贈与によって不動産を取得する人に発生する税金です。贈与税の税額は次のように計算されます。
税額 = 課税価格※1 × 税率 − 控除額
(※1)課税価格 = 贈与財産価額※2 − 110万円(基礎控除)
(※2)贈与財産価額のさまざまな評価方法(国税庁サイト)
税率・控除額は次表のとおりとなっています。
基礎控除後の課税価格 | 税 率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | - |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
年数がだいぶ経った空き家や田舎にある土地であっても、贈与税の基礎控除額である110万円を上回っている不動産を譲り受ける場合は贈与税が発生することがあり、注意が必要です。
贈与税が課税される人は毎年1月1日から12月31日までの1年間の贈与財産の合計額に対して、その申告・納税を翌年2月1日から3月15日までの期間に行います。
贈与税は、不動産を譲り受けた際に1度だけ課されます。
参考国税庁 贈与税の計算と税率
不動産取得税
不動産取得税は、不動産を取得したときに都道府県が課税する地方税です。不動産取得税はおおむね次のように計算されます。
税額 = 固定資産税評価額 × 4%
ただし、特例により以下のとおり標準税率が軽減されます。土地及び住宅 3%(2021年3月31日まで)住宅以外の家屋 4%
不動産取得税の納税は、物件を取得した後6ヶ月〜1年半くらいの間に各都道府県から届く「納税通知書」を使用して納付します。なお、納期は各都道府県により異なります。
不動産取得税も、不動産を取得した際に、1度だけ課されます。
固定資産税
固定資産税は、土地・建物などの固定資産を1月1日時点で所有している人に毎年課される税金です。市町村の決定した固定資産税評価額に基づき、その年の4月1日から翌年3月31日までの分が課されます。
税額 = 固定資産税評価額(課税標準額)× 1.4%
標準税率は1.4%が基本となっていますが、市町村の財政状況などにより高い税率をかけている場合があります。
この固定資産税評価額は3年に1度、評価が見直されることになっています。
固定資産税は、不動産を保有する限り、毎年課されます。
都市計画税
都市計画税は固定資産税と同様、1月1日時点で所有している人に課される税金ですが、都市計画区域(市街化区域)内の土地・家屋の所有者に課税されます。
税率は0.3%を上限として、市町村ごとに定められます。
税額 = 固定資産税評価額(課税標準額)× 0.3%
※ 市町村が独自に税率を定めることもできるため地域によって異なる場合があります。
都市計画税も固定資産税と同様、不動産を保有する限り、毎年課されます。
その他
改修・リフォーム費用
物件の放置期間が長かったり、古い物件の場合は改修・リフォームが必要になるケースがあります。特に床・屋根・水回りなどに改修が必要な場合は、大きな費用がかかります。
内部の片付け費用
空き家の内部にある家具などが片付いていない場合、片付けを業者に依頼するとその分の費用がかかります。
参考事例
参考として、土地・建物の無償譲渡の際に、もらった方にかかったお金の実例をご紹介します。
物件概要
某地方都市にある店舗兼住宅物件
土地 | 297.5㎡(宅地) |
建物 | 185.12㎡(木造2階建) |
固定資産税評価額 | 1,944,171円 |
取得にかかった費用
登録免許税・印紙代等 | 28,860円 |
司法書士報酬・通信費等 | 52,500円 |
贈与税 | 97,200円 |
不動産取得税 | 50,000円 |
計 | 228,560円 |
(固定資産税) | 9,400円/年 |
※改修費用および内部の片付け費用は含まれていません。
まとめ
たとえ無償譲渡物件であっても、次のようなお金がかかります。
- 不動産の登記費用(登録免許税)
- 税金(贈与税・不動産取得税・固定資産税・都市計画税)
- リフォーム・改修費用
- 内部の片付け費用
物件をもらう場合は、こうした費用がかかる可能性があることに十分注意してください。
また場合によっては、片付け料を物件をあげる側が金銭で清算したり、片付けが済んでから譲るケースもみられます。
しっかりとした説明を受け、事前に条件をよく確認した上で、契約を結ぶようにしましょう。