危険な空き家の撤去費用に、自治体が昨年度投じた額が3億8000万円あまりにのぼり「3年間で17倍と急増」している一方で、本来空き家所有者が負担すべき撤去費用の9割以上が回収できず公費負担となっていることが報道されました。
参考「危険な空き家」自治体の撤去費用 3年間で17倍に
出典:NHK NEWS WEB(2019/12/3)
危険な空き家は、2015年に「空き家対策特別措置法」が施行されて以来、自治体が強制的に解体し、その解体費用を空き家所有者に請求できるような仕組みになっています。
いまいちど、その制度のおさらいと現状について確認してみましょう。
制度の概要
空き家所有者は、たとえ税金を払っていても、その空き家の管理責任からは逃れられません。
空き家になったまま管理をせず、放置した状態が長い間続くと、倒壊の危険性や害虫・悪臭の発生などにつながります。
こうした放置空き家は自治体から「特定空き家」として指定されるようになり、特定空き家に指定されると、次のようなペナルティが順に科されます。
- 空き家を放置
↓ - 特定空き家に指定
↓ - 助言・指導
↓それでも放置 - 修繕・除去するよう勧告(固定資産税6倍・都市計画税3倍に)
↓それでも放置 - 勧告にかかる措置をとるよう命令(命令に背くと50万円以下の罰金)
↓それでも放置 - 自治体による行政代執行(解体)
勧告に応じない場合に、毎年の固定資産税は6倍に、都市計画税は3倍にふくれあがります。
また最終的には自治体によって強制的に建物が取り壊され、解体費用として数百万円〜が請求されることになってしまいます。
ただし、一度特定空き家に指定されても、原因となっている状態を改善することで特定空き家の指定は解除されます。
自治体による解体(行政代執行)事例
全国の主要都市で、すでに数百万円〜一千万円以上の解体費用が空き家の所有者に請求されている事例がいくつもあり、身近なところで起きています。
この費用は、自己破産をした場合にも、決して免責されることはありません。
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空き家問題・自治体による強制撤去(行政代執行)とその費用【事例】
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また2018年度に実施された代執行は、25の道府県で合わせて67件にのぼっています。
6件 | 兵庫県 |
5件 | 千葉県 |
4件 | 北海道、秋田県、島根県、福岡県 |
3件 | 茨城県、山梨県、三重県、石川県、滋賀県、大阪府、愛媛県、長崎県 |
2件 | 宮城県、山形県、埼玉県、新潟県、岐阜県 |
1件 | 青森県、岩手県、富山県、静岡県、岡山県、熊本県 |
一方で、このうち費用が回収できたのは全体の1割未満、ほとんどが公費による支出となっており、前年度の17倍となっているとのことです。
まとめ
空き家を放置することは、所有者に罰金が課されたり、増税による負担増につながるほか、ひいては所有者に一方的に撤去費用が請求されることとなります。
また空き家の所有者から撤去費用が捻出できないと、税金など公費で負担する必要が生じ、他の行政サービスの縮小・低下や、あらたな増税につながる可能性があります。
空き家の所有者は当事者意識を持ち、そのゆくえについて責任をもってしっかり考えることが大切です。
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