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空き家問題・自治体による強制撤去(行政代執行)とその費用【事例】

2019年9月30日

2015年の空き家特別措置法の完全施行により、放置された空き家に対して行政が強制的に解体などを行う「行政代執行」が全国で行われています。

 

代執行がおこなわれると、行政が自ら解体行為などを行い、その費用は義務者(所有者)から強制的に徴収されることとなります。

 

全国で行われた「行政代執行」による空き家撤去の事例をみていきましょう。

*本記事は、総務省「行政代執行・略式代執行取組事例集 」の内容を一部抜粋し、まとめたものです。

「行政代執行」による空き家撤去の事例

事例1 室蘭市

対象 措置の内容 周辺環境
平屋(築57年) 除却 家屋に隣接、下方に住宅有り
費用 費用回収状況 備考
840万円 分割納付中 コンクリート壁崩壊による隣家への被害発生後、対応開始

概要

・空き家の敷地に付帯するコンクリート擁壁が崩壊し、斜面下の民家が被災
・斜面崩落により隣接する擁壁の崩壊など、更なる被害発生のおそれあり

行政代執行事例1

経過

・所有者は市外へ在住
自己破産しても免責されない旨説明
・動産(埋設物を含む)と家屋を含む不動産の全てを処分(廃棄)することについて、書面で同意
・行政代執行の実施(工期7月11日~10月24日)
・空き家所有者に対し、代執行費用の納付命令を行ったが、一括納付(840万円)は困難との回答
分割での支払(月額 2 万円。分納額は 1 年毎に見直し)とされた

 

事例2 礼文町

対象 措置の内容 周辺環境
2階建(築37年) 除却 観光地に向かう主要道路沿い
費用 費用回収状況 備考
95万円 全額自治体負担 コンクリート壁崩壊による隣家への被害発生後、対応開始

概要

・平成 2 年増築。3年9月に火災により半焼し、以来空き家状態
3 分の 2 程度が倒壊し、残り部分も瓦礫状態で倒壊のおそれあり。
・倒壊部分の瓦礫やゴミが放置された状況で衛生上有害のおそれあり。
・既存部分も瓦礫状態で、屋根や壁の破損が進み、景観を著しく損ねている。

行政代執行事例2

経過

・最後に居住していた者は、火災以降、所在不明
・固定資産税情報、登記情報等で特定できた名義上の所有者(最後に居住していた者とは別人)の住所地の市役所に住所照会を行ったが、所在等が確認できなかったため、所有者等不確知と判断
・略式代執行の実施

 

事例3 豊浦町

対象 措置の内容 周辺環境
2階建(築72年) 除却 家屋に隣接、通学路沿い
費用 費用回収状況 備考
170万円 検討中 廃棄物による追加費用発生

概要

・半倒壊状態
・平成 27 年 7 月に隣家から苦情を受けて、対応開始
・土地所有者と建物所有者は別。土地所有者は当該建物が存在すること自体を認知していなかった
・建物所有者は行政代執行実施前に死亡。相続人が存在

経過

・建物所有者は生活保護受給者のため除却費用 の捻出は困難であり、家族も経済的な理由で、建物所有者の支援は困難と回答
・行政代執行の実施(29.1.25)
・建物内には家具・家電が多く残され、床下からはタイヤなどの産業廃棄物も発見されたため、追加費用が発生した。

 

事例4 青森県 五所川原市

対象 措置の内容 周辺環境
2階建(築48年) 除却 家屋に隣接
費用 費用回収状況 備考
583万円 全額自治体負担 法人所有物件 抵当権者へ代執行実施を参考通知

概要

・平成27年10 月の強風による被害により、建物の壁の一部が隣地の民家敷地へ落下
・被害拡大のおそれがあったため、消防による応急対応を行ったが、数日後に再度同部分が崩落
・破産法人が所有していた建築物で、平成12年に破産管財人において権利放棄がなされている状況であったため、所有者等不確知と判断
固定資産税も不払であり、請求先もないことから公示送達されていた。

行政代執行事例4

経過

・当該家屋の除却に係る費用の回収が見込めないことから、そもそも市で支出すべき事案かどうかや、市で支出する場合、その費用をどのように捻出するかが問題となった
切迫性が高いことからやむを得ないと判断し、市長に説明し了解を得た
・略式代執行の実施(28.2.26)

 

事例5 山形県 川西町

対象 措置の内容 周辺環境
3階建(築64年) 除却 家屋に隣接・通学路沿い
費用 費用回収状況 備考
389万円 分割納付中 建物の基礎部分は残置

概要

・屋根が崩壊し、建物全体に腐食が見られる。
・建物全体が傾いて隣家にもたれかかる寸前の状態
・家具等の家財道具がそのまま放置されている。
・所有者は福祉施設建設目的で競落したが活用せずに放置

行政代執行事例5

経過

・経済的理由により除却できないとのことから、代執行実施に向けての手続を進める方向で検討
・行政代執行の実施(28.12.26)
・所有者側から分割納付の申出があり、検討協議の上、延滞金を含め分割納付する旨の誓約を取り付け、元金を優先して納付することとした。

 

事例6 群馬県 前橋市

対象 措置の内容 周辺環境
平屋 除却 家屋に隣接
費用 費用回収状況 備考
99万円 全額回収済み

概要

・2 軒長屋の 1 軒であり、別の 1 軒も特定空家等(所有者把握済み)であったが、本件略式代執行と連続した工事(費用は所有者が負担)により除却
・家具や電化製品等があったが、傷みが激しく、弁護士(市空家等対策協議会委員)に鑑定を依頼したところ、全て「価値無し」と判断された。
・所有者は死亡しており相続人(24人)も全員死亡又は相続放棄していたため、所有者等不確知と判断

行政代執行事例6

経過

・行政代執行の実施(28.7.14)
・申立のため、相続人(所有者の兄弟姉妹等)の戸籍謄本等をそろえる作業に約半年を要した。
跡地売却により、除却工事費用全額を回収

 

事例7 千葉県 柏市

対象 措置の内容 周辺環境
3階建(築45年) 除却 家屋に隣接、JRの線路及び都市計画道路に近い
費用 費用回収状況 備考
1,000万円 土地差押え後、
公売により一部回収
法人所有物件

概要

・建物全体が老朽化により劣化している。
・元事業所であり、建物は法人名義だが、当該法人は実態がない(解散等はしておらず登記上存続しているものの営業は行っていない。)

行政代執行事例7

経過

・法人代表者を訪問し、登記簿の事実確認。所有者による除却については、経済的理由により対応困難との回答
・行政代執行の実施(29.4.20)手作業による解体を実施したため工事期間が長期化(約2か月)し、本体工事に加え、現場周辺を通行止めにして複数のガードマンを立たせ る等の安全対策を講じたため、除却費用が増加
・県を通じて公売。29年11月落札

 

事例8 千葉県 香取市

対象 措置の内容 周辺環境
ビル附属物 除却 国道に近い
費用 費用回収状況 備考
119万円 全額回収済

概要

・木造附属屋が傾斜し、隣のビル側へ倒壊のおそれ(管理会社から苦情有り)
・ビル屋上の塔屋部の倒壊
・ビル入口部分の窓ガラス等の破損
・固定資産税情報、登記簿謄本、近隣住民への聞き取り等による調査を行ったが、所有者は海外に出国しており、出国先の居所も不明のため所有者等不確知と判断

行政代執行事例8

経過

・自治会から長年にわたり苦情を受けていたため、自治会長へ略式代執行する旨を説明
・市内の2業者から見積り取得後、決定
・略式代執行の実施(29.2.28)

 

まとめ

事例からは、建物の所有者がわからないものや、建物の存在を知らなかったもの、相続放棄されたものなど、さまざまな空き家問題の実態をうかがうことができます。

また空き家撤去までのやりとりの過程や、強制的な費用回収の手段など生々しい内容が記載されています。

あなたの空き家がこうなってしまうと、精神的・経済的な負担が大きくなります。

こうした状況にならないためにも、あなたの空き家のゆくえについて、可能な限り早く決断することが必要です。

 

具体的な空き家処分の進め方は、次の記事で詳しく解説しています、ぜひご覧ください。

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【早期決断が重要】失敗しない空き家処分のすすめ方【6つのステップ】

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*本記事に掲載した事例のより詳しい内容、およびその他の事例は、総務省「行政代執行・略式代執行取組事例集 」をご覧ください。

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